散文

はる

もう春なんだよ。早いなあ。 「春よ 遠き春よ 瞼閉じればそこに」 「愛を くれし君の 懐かしき声がする」 「夢を くれし君の まなざしが肩を抱く」 私にはまだ、遠い過去の春なんてそんなにないから、どこかにそういう人がいるような気になって聴いてみるけ…

わたしの犬

飼ってる犬が年とって弱ってきたので、私は寂しくて悲しくて、もっとかわいがってやればよかったとかいつ死ぬんだろうとかばかり考えていて、父と母は犬の墓の話をしている。いつも暖かい犬が、冷たくなっているところを想像すると怖い。目は閉じて眠るよう…

一瞬のきらめきを懐かしく思える日はあと何瞬したら来るのだろう

ぐずついた心臓の中でもいちばん煮崩れしやすいところが、うずいてしまって仕方がない。つまり恋だ。君を目にすると私は動悸が激しくなるし、体は発汗するし、喋るのもどもってしまう。 ぐずついた心臓の中でもいちばん冷めやすいところが、けちばっかりつけ…